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アルバイト(2)
記事No.252 - 投稿者 : アロエ - 2015/07/18(土)18:33 - [編集]
「準備出来たよ」
レンズの角度や距離を調整し終えると、山岡は言ってきた。 三脚に設置されたビデオカメラのレンズが、壁際に立つ渉へと向けられる。何度となく経験させられた事とはいえ、やはりいざ撮影が開始されるこの瞬間は、渉の中で緊張が高まってきてしまう。 すでに空も暗くなった時間。薄汚れた蛍光灯が、ほのかに密室の空間を照らす。 いつも以上に、渉は気が気でならなかった。近所の公園に建てられた公衆トイレ。そんなありふれた建物の身障者用スペースの中で、これから始まる極めて不道徳な行為と撮影。今さらながら、浅はかにも山岡から金を受け取ってしまった事を、渉は後悔せずにはいられない。 「落ち着かないみたいだね」 渉の様子を察して、山岡が言ってくる。 「だって、誰も来ないって保障ないじゃないですか」 「大丈夫だよ」 「………」 「こっちだってちゃんと考えてるから、信用しなって」 「もしかして、近くで誰かが見張りでもしてるんですか?」 「さぁ、どうだろ」 「………」 渉の問いをはぐらかし、山岡は明確な回答を示そうとはしてこない。 だがこうなった以上、渉とて覚悟を決めるしかなかった。 (この場所が……全ての始まりなんだよな……) 向けられたカメラと対峙しながら、渉はそんな思いを巡らさずにはいられない。 もしあの時、用を足しにこの公衆トイレに立ち寄る事さえなかったら。そして、いきなり声を掛けてきた見知らぬ男の誘いなど無視していれば。わずか数ヶ月前の出来事ながら、渉にとってあまりに歪な非日常の始まりとなった場所。 あの日の記憶が、渉の中で蘇っていく。 「それじゃ、始めようか」 山岡と名乗った男は、小型のビデオカメラを手にしながら事もなげに言ってきた。 震えそうになる身体を、渉は懸命に堪えようとする。正直、今すぐにでも逃げ出してしまいたい衝動を覚えてならない。幸い、公園の公衆トイレというこの場所が、唯一の救いではあった。周囲には住宅が立ち並んでいるだけに、いざとなれば助けを叫ぶ事も出来る。そんなわずかな安堵と希望が、この状況の中で渉の心を寸前のところで支えていた。 「緊張してる?」 そんな渉を少しでも落ち着かせようと心掛けているのか、山岡は気さくな口調で問い掛けてくる。 「いえ……大丈夫です……」 声を引き絞り、渉はそう答えるのがやっとであった。 「すぐに終わるから、安心して。約束通り、ちゃんと終わったら謝礼も払うからさ」 「………」 「まだ、俺の事が信用出来ない?」 「そういう訳じゃないですけど……ホントに、これって普通のとことかには出回らないんですよね……?」 「君だって、これがヤバい撮影だって事は分かってるだろ?下手に出回りでもすれば、それこそ俺が危ないからね。そこんとこのリスクは、こっちだってしっかりと考えてるから」 「………」 もう今となっては、山岡の言葉を信じる以外にない。 部活帰りの夜。帰路にあるこの公園のトイレに立ち寄っただけのつもりが、まさかこんな男に声を掛けられる事になるなど、渉としてはまさしく予想外の出来事であった。無論、男の言葉になど耳を貸さず、さっさとこの場を立ち去るのが賢明な選択だったであろう。しかし山岡が提示してきた五千円という金額が、常に金欠に頭を悩ましていた渉にとって、まさに悪魔の誘惑となってしまった。 (大した事じゃない……ただ、フルチンになったとこを撮られるだけだ……) 渉はそう、自らへと必死に言い聞かせる。男からの要求と異常性は、十分に分かっていた。だがそれでも、ほんの少しカメラの前で耐えれば報酬がもらえるのだという魅力は、渉にとって捨て難いものがある。 「心の準備は出来た?」 やがて山岡は、改めて渉へと問い掛けてきた。 渉は躊躇いを振り払い、意を決して男へとぎこちなく頷く。 「はい……」 「じゃあ、まずは君の全体像を撮るとこから始めるね」 山岡はそう言うと、壁際に立つ渉へと向けてカメラを構えてきた。 「まだ何も聞いてないんですけど……俺は、どうしたら……?」 「こっちから必要な指示は随時するから、それに合わせて受け答えしてくれれば大丈夫だよ。特に、撮影だからって変に意識しなくていいから」 「分かりました……」 「始めるよ、そのまま動かないでね」 戸惑う渉に対し、山岡は半ば強引に撮影を開始する。 カメラを向けられながらも、どうしていいのか分からない渉は、ただ黙ってその場に立ち続ける以外になかった。 無言で立ち尽くす渉に、山岡も特に文句を言ってくる様子はない。作動させたビデオカメラで、スポーツウェアを身に纏う渉の姿を淡々と撮影し続ける。 不気味な沈黙の時間。 やがて山岡はカメラを向けたまま、渉へゆっくりと近付いてきた。 渉の顔へ、間近にまでレンズが迫る。 居た堪れなさに、強張った表情でカメラと向き合いながらも、視線だけは横へと逸らせた。いつ終わるとも知れない緊張の中で、胸の鼓動は苦しいまでに高鳴り続ける。 やがて山岡は、渉の顔から胴体、足へと、至近距離からゆっくりカメラを傾けながら、身体の隅々までその姿を映像に収めていく。 再び、レンズは渉の顔へと向けられる。 「年齢を、教えてくれるかな?」 カメラ越しに、山岡が言ってきた。 「十七です」 「高校生?」 「はい」 「その格好からして、部活してるの?」 「はい」 「何部?」 「サッカー部です」 「じゃあ、今日は練習の帰り?」 「はい」 この映像を見る視聴者への自己紹介のつもりであろうか。カメラで渉の姿を撮影しながら、山岡が次々と質問を投げ掛けてくる。 そんな山岡に、渉も素直に答えを返した。 「イケメンだね」 カメラを渉の顔へ向けたまま、山岡が言ってくる。 「そうですか……普通だと思いますけど……」 「サッカーしてるとこもカッコよさそうだし、女の子にモテるでしょ?」 「別に、そんな事は……」 「付き合ってる彼女とか、いるの?」 「えっ……」 その質問に、思わず渉は戸惑いを露わにしてしまう。 「いるんだ?」 「まぁ……は、はい……」 「その子と付き合って、どのくらいになる?」 「長い方かな……今で、大体二年くらいです……」 「いいねぇ。スポーツに恋に、まさに青春真っ盛りだ」 「………」 今さらながら、カメラの前で何でこんな事まで答えなければいけないのかと、渉は内心馬鹿らしく思えてきてしまう。 だがそんな渉に対し、さらに山岡からの質問が続く。 「彼女とは、もうエッチはした?」 「それは……」 「二年も付き合ってるんだし、何もないって訳ないよね?」 「………」 「もしかして、まだ童貞?」 「いえ……その……しました……」 「やっぱ、やる事はやってんだ」 「………」 「どういうとこで、いつも彼女とはやってるの?」 「一応……まぁ、誰もいないとことかで……」 「部室や体育館倉庫とか?」 「学校では、してないです……彼女も、そういうとこは嫌がるんで……」 渉はそう答えると、なぜか山岡はやや残念そうな表情をしてくる。 「じゃあ、どういうとこでしてるの?」 執拗に問い掛けてくる山岡に、渉もさすがにうんざりしてしまう。どうやら正直に答えない限り、この質疑応答は終わりそうにない。 「こういうとこで……ここじゃないけど、公園のトイレとかで……」 「なるほど」 「………」 「つまり、こういう場所で大胆な事をするのは、君も慣れてるんだ?」 「慣れてるって訳じゃないけど……」 山岡からの問いに、渉は窮してしまう。 (聞いてねぇぞ、こんなの) 思わず、そう苦情を山岡へ入れたくなってしまう。誰が見るとも知れない変態ビデオながら、自らのプライベートを赤裸々に告白させられる事に、撮影は未だ序盤でしかないにも関わらず、渉はすでに堪らない恥ずかしさを覚えてならない。 だがそんな渉の気持ちなどまるで配慮する欠片もなく、山岡の撮影は続く。 カメラはまたゆっくりと角度を下げていきながら、渉の股間の辺りで固定される。 「じゃあ今から、女の味を知った君のがどんなものなのか、ここで見せてもらおうかな」 ついに来たかと、渉の中で再び緊張が高まっていく。 「カメラの前で見せるのは、初めてだよね?」 「はい……」 「大丈夫?」 「何とか……頑張ります……」 「それじゃ、脱ごうか」 「………」 覚悟をしていた事とはいえ、やはりいざカメラの前で行動に移るとなると、渉は躊躇いを覚えてならない。 (これで、金が貰えるんだ) 迷いを振り払い、何とか渉はこの状況を損得勘定で割り切ろうとする。ここで耐えればそれでこの撮影も終わりなのだと、挫けそうになる心を懸命に鼓舞しながら、渉は穿いていたズボンの両端をそれぞれの手で掴んだ。 その間も、山岡は無言のまま渉へとカメラを向け続ける。 (何も考えるな) 渉はそう腹を括り、下着もろともズボンを一気に引き下ろす。 「上も、捲って」 すかさず、山岡から指示が出された。 もはや後には引けず、渉は言われるがまま上着を臍の下辺りまで捲り上げた。 カメラの前に、渉の股間が完全に曝け出される。 案の定、露わとなるペニスへと、山岡がレンズの焦点を合わせてきた。 極度の緊張で、すっかり委縮して垂れ下がった陰茎。やや黒ずんだ包皮の先から、亀頭がわずかに顔を覗かせる。 山岡は、床へとしゃがみ込む。至近距離からこれでもかとばかりに、そんな渉のペニスを撮影してくる。 渉はただ、耐えるしかなかった。 「恥ずかしい?」 やがて山岡は、しゃがんだまま渉を見上げる様に、カメラを顔へと向けてくる。 「その……こんな姿のままで、ずっと見られ続けるっていうのは……やっぱ、きついものがあるっていうか……」 「だけど、さっき頑張るって言ったよね?」 「は、はい……」 渉の言質を取ったつもりか、カメラがペニスへと向け直される。 いつ終わるとも知れない撮影。無様な姿のままジッと立ち続ける渉の中で、羞恥以上に惨めさが増していく。 (こんなの撮って、何が面白いんだよ) 自分の知っていた世界というものが、いかに小さいものでしかなかったのかを、渉はこの撮影で痛感させられる。己の性器へと向けられるカメラ。そしてこのレンズの向こうに、自分のこんな姿を見て興奮する人間が大勢いるのかと思うと、渉は背筋が寒くなってきてしまう。 「皮は、もっと剥ける?」 山岡が言ってきた。 「剥こうと思えば……」 「じゃあ、剥いてみてくれない?」 事もなげに、山岡が指示してくる。 一刻も早く撮影を終えたい渉としては、山岡からの求めに応じるしかなかった。包皮を摘み、可能な限り捲り上げる。 赤黒い亀頭が、ほぼ完全な姿を晒す。 だがそれでもなお、山岡が撮影を終える気配はない。 「今ここで、勃起させる事は出来ないかな?」 「えっ……勃起ですか……」 「どうせなら、君のがギンギンになったところも、見てみたいんだけど」 「………」 「だめ?」 「この状況じゃ……難しいです……」 エスカレートしていく山岡の要求に、渉もさすがにこれ以上従い続ける事に危機感を覚えてならない。 すると山岡は、自らのポケットからスマートフォンを取り出してきた。 カメラをこちらへ向けたまま、もう片方の手で器用に画面を操作する山岡の姿を、渉は怪訝に見下ろす。 やがて渉へ、山岡はそのスマホを差し出してきた。 「ちょっと、これで試してみようか」 映し出されたスマホの画面を目にするや、渉はハッと息を呑む。 「カメラは気にしなくていいから、しばらくそれ見るのに集中して」 「………」 山岡から、渉へとスマホが手渡された。 画面に映し出される映像。二十歳前後といった容姿の若い女性が、着衣を乱されあられもない姿となりながら、ベッドの上で男に身体を弄られていく。 (これで、興奮しろって事か) いわゆる、アダルトサイトか何かの動画であろう。音声は小さく抑えられてはいたものの、男からの行為に表情を歪ませながら、女性の妖艶な喘ぎ声がわずかに聞こえてくる。 やむなく渉は、その画面へと意識を集中させていく。 そんな渉の姿を、山岡は無言で撮り続ける。 映像は、徐々にその内容の過激さを増していく。男の勃起したペニスが、女性の眼前へと突き出される。女性は躊躇いなく、そんな男のペニスを大胆に咥え込む。しばし濃厚なフェラチオシーンが展開されていく 映像を目にしながら、渉の中でかすかな欲情が芽生え始める。 (やばい……マジで、反応してきたかも……) 視覚による扇情的な刺激が、否応なく渉の身体を反応させていく。股間へと血流が増していく感覚が、鮮明に伝わってくる。 「お、反応してきたね」 やがて山岡が、嬉しそうに言ってきた。 それまですっかり委縮していた渉の陰茎が、ゆっくりと膨張を開始してくる。 勃起していく過程をひたすら観察され、撮影されるという状況に、渉は新たな羞恥を覚えてならなかった。 やがて動画は、男女による本格的な性交のシーンへと移行していく。 全裸となった女性が、ベッドの上で大きく開脚させられる。その割れ目へ、男のペニスが挿入されるや、激しい腰使いで女性を責め立てていく。 男のピストン運動に大きく身体を揺らしながら、恍惚の表情で悶える女性の姿。 そのシーンを目にしながら、渉もまた興奮を掻き立てられていく。 「いいねぇ、どんどん勢いがついてきてる」 結局、山岡の目論見通りとなってしまう。 それまで垂れ下がっていたペニスは硬さを増していきながら、その幹を勇ましく起き上がらせていく。 膨張して青筋を浮き上がらせた陰茎が、カメラの前で逞しく反り返る。 「さすが、若さが漲ってるねぇ。羨ましいくらいだよ」 すっかり豹変した渉のペニスを前に、山岡が感嘆する様に言ってきた。 だが火照った身体とは裏腹に、渉にとってはそこからがまた、恥辱に耐える時間の始まりとなる。 勃起したペニスへと、様々な角度から山岡がカメラを向けていく。 「カッコよくて、しかもこんな立派なの持った彼氏となら、エッチする時も彼女すごく喜んでるでしょ?」 「そんな事は……まだ、何回かしたってくらいだから……」 「きっと彼女も、こんなので突きまくられたら、もう他の男じゃ満足出来なくなるよ」 「………」 山岡は軽い気持ちで言っているのかもしれないが、渉としては恋人を侮辱されているかの様で、怒りを覚えずにはいられない。だが同時に、金に目が眩み結果的にカメラの前でこんな無様な姿を晒している今の自分自身に、彼氏として申し訳ない気持ちで一杯になっていく。 「どうだろ、いっそこのまま射精までしてみてくれないかな?」 そんな渉へ、さらなる要求を山岡が言ってきた。 「えっ……」 「無理?」 「あの……フルチンになって、それを撮影するだけだって……さっき……」 「もし君がOKしてくれるなら、ギャラを追加するよ」 「………」 「ここまできたんだし、どうせなら最後までやろ」 躊躇う渉に対し、山岡は何とか懐柔して撮影を続行しようとしてくる。 「射精って……自分でやるって事ですか……?」 「うん」 「………」 「普段してる様に、オナニーすればいいだけだからさ」 「でも……ここで、出来るかどうか……」 「ちゃんと立派に勃起したんだし、大丈夫だよ」 「………」 「やってみて」 山岡が、渉を促してくる。 さすがにこの状況で、とても射精出来る自信は渉になかった。だがそれだけに、何とか形だけでも行為はして、出来ないものは出来ないという結果を示す事で、山岡に諦めてもらうしかなかった。 渉は己のペニスを掴み、カメラの前で扱き始める。 (何やってんだよ……俺……) 男の前でただ黙々とペニスを扱く自分自身の姿に、渉は泣きたくなる程の情けなさに苛まれていく。 沈黙の中、渉が自慰をする姿が淡々と撮影され続ける。 だが案の定、今度ばかりは身体が反応する気配はなかった。むしろ時間の経過とともに、一時は動画による興奮もあって硬くなっていたペニスも、徐々にその勢いを衰えさせていく。 「どう、イケそう?」 しばらくして、山岡が問い掛けてきた。 「やっぱ……なかなか、そこまでは……」 もうこれで勘弁してくれと、渉も根を上げる。 すると山岡は、それまで手に構えていたカメラを、静かに床へと置いた。 これでようやく解放されると、渉はホッと胸を撫で下ろす。 だが、それはほんの一瞬のぬか喜びでしかなかった。山岡は室内の隅に置いていた自らのバックを開けるや、何やら黒い束になった棒状のものを取り出してくる。 (え……?) 渉が何事かと思っている内に、束になった棒がそれぞれ三方へと広げられ、床へと立て掛けられる。どうやらそれが小型の三脚である事はすぐに分かった。 それまで手にしていたカメラを、山岡はその三脚へと設置する。 (今度は何する気だよ) うんざりする思いとは裏腹に、山岡は三脚に固定したカメラを渉へと向けて調整し、さらにバックの中から筒状の小さなプラスチック製の容器を取り出す。 「じゃあ、こういうのどうだろ」 そう言いながら、山岡は渉に対しその容器を示してくる。 「それって……」 「大丈夫、普通のローションだよ。使った事ない?」 「はい……」 「後で拭けば大丈夫だから、ちょっと垂らすよ」 渉は了承したつもりなどなかったのだが、山岡はキャップを外すと、その容器の開け口をペニスの上から傾けてきた。 ねっとりとした透明な粘液が、容器からゆっくりと零れ落ちてくる。 亀頭へと液体が触れるや、ゾクッとした感覚が渉の中を一気に駆け巡っていく。 何も出来ないまま、渉は身を強張らせて立ち尽くす。 その間、容器から注がれるローションによって、渉のペニスは根元までその透明な液体で塗れていく。 ひんやりとした感覚が、股間を包み込む。 「よし、これで試してみようか」 山岡はそう言うなり、右手を素早く伸ばしてくる。 「っ……!」 勃起した渉のペニスが、山岡の手によってしっかりと掴まれた。 突然の行為に、渉は硬直してしまう。 「動かないでね」 もはや渉への合意を求める事もなく、山岡が一方的に指示してくる。 だがそんな山岡の強引さにすっかり圧倒させられ、渉も抗う事が出来なかった。 山岡は、渉のペニスをゆっくりとした手付きで扱いていく。 ヌチョヌチョと、ローションに塗れたペニスと動かされる手の摩擦で、独特の音が個室の中に響き渡る。 (だめだ……このままじゃ……) 山岡からの行為に、渉の中で恐怖と焦燥が募っていく。 そんな中で、山岡の手はしだいにその動きを大胆にさせてくる。ローションの潤滑もあって、滑らかな動きでペニスが扱かれていく。 「んっ……んぅ……」 思わず、渉はくぐもった声を洩らしてしまう。 戸惑いとは裏腹に、股間は急速に熱を上昇させていく。山岡の手の動きに合わせて、燻ぶる様なもどかしい感覚が、湧き起ってくる。 渉の反応に、山岡も満足そうな笑みを浮かべてきた。 「感じてきた?」 「そ、その……何ていうか……」 「ほら、また元気取り戻してきたみたいだね」 ペニスを見ながら、山岡が指摘してくる。 今までとは違う新鮮な刺激に、萎えかけていたペニスが再び勢いを取り戻していく。 すかさず山岡は、指先で亀頭部分を集中的に刺激してきた。 「んぁっ……んんっ……!」 堪らず、渉は大きく腰を捩じらせる。 「いいねぇ、その調子だよ」 亀頭が真っ赤に充血していく。その小さな鈴口から、ローションとは違う透明な液体が溢れ始めていた。 (嘘だろ……) 渉は、狼狽せずにはいられない。男にペニスを刺激されながら、いつしか身体が敏感に反応してきてしまう。性感の疼きが、渉の中で欲望を昂ぶらせていく。 そんな渉へ、さらに男は活発にペニスを扱いてくる。 「あぁっ……」 快楽への衝動が、刻々と高まっていく。渉は山岡からの行為に、自然と渉は身を委ねる形となってしまう。 「んんぅ……い、イクっ……出そうです……」 息を乱し、渉はそう訴えずにはいられなくなる。 「じゃあ、カメラに向かっていっぱい出そうか」 カメラとペニスの位置を確認しながら、山岡はラストスパートとばかりに、激しくその熱い幹を扱き立てていく。 渉は、大きく背筋を反り返らせた。 「もう、俺っ……あぁっ……!」 高まり続けていた欲望が、一気に爆発する。 カメラに向けて、渉のペニスから白濁が勢いよく噴出した。 絶頂に、渉の足腰が激しく震える。 渉の姿に、山岡は見惚れる様な熱い眼差しを向けていた。 男によって導かれた快感。渉は射精する自分の姿をあられもなくカメラに曝け出しながら、その解放感にすっかり放心状態となってしまうのだった。 (続) COPYRIGHT © 2015-2024 アロエ. 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作者 アロエ さんのコメント やっぱ小説書くって時間かかります・・・続編の投稿の時期は未定です
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